2025年5月20日から22日にかけて名古屋で開催されるINTERMOLD/AM EXPOは、単なる展示会ではなく鋳造・金型業界の技術転換を象徴するイベントとなる。金型専門展とアディティブマニュファクチャリング展の同時開催という構成自体が、従来工法とデジタル製造の境界が溶解しつつある現状を物語っている。特に中部圏という日本最大の製造業集積地での開催は、地方製造業による技術主導権の奪還という文脈で注目に値する。
参考: 5/20-22 INTERMOLD 名古屋/AM EXPO に出展します。(朝日新聞)
分析・見解
今回のINTERMOLD名古屋開催で最も重要なのは、AM EXPO(アディティブマニュファクチャリング展)との同時開催という構成である。従来、金型製作と3Dプリンティングは別領域として扱われてきたが、2020年代半ばの現在、両者の技術的融合は既に実用段階に入っている。特に砂型鋳造における3Dプリント砂型の採用率は、国内大手鋳造メーカーで試作工程の約40%に達しているとの業界調査もある。木型製作に2週間かかっていた工程が、3Dプリントなら2日で完結する。この10分の1という時間短縮は、試作コストの劇的な削減だけでなく、設計変更の自由度を根本的に変える。名古屋という開催地選択も戦略的だ。中部圏は自動車部品鋳造で国内シェア60%超を占める一方、東京や大阪に比べデジタル技術の導入は遅れていた。しかし2024年以降、トヨタ系列各社がカーボンニュートラル対応で軽量化部品の内製化を進める中、従来外注していた複雑形状鋳造品を3Dプリント砂型で試作する動きが加速している。展示会のタイミングは、まさにこの技術転換期の真っ只中を捉えている。さらに見逃せないのは、コロナ禍で停滞したリアル展示会の復権である。オンライン商談では伝わらない金型表面の仕上がり、砂型の強度、3Dプリント造形物の実物触感といった「手触り」の情報交換こそ、鋳造業の技術判断に不可欠だ。
ビジネスへの影響
鋳造メーカーにとって、この展示会は3つの実務的価値を持つ。第一に、3Dプリント砂型の導入判断材料の収集である。装置価格は300万円から2000万円超まで幅があり、自社の生産ロットと形状複雑度に見合う機種選定には実機比較が必須だ。第二に、サプライチェーン再編の情報収集機会となる。EV化で需要が急減するエンジン部品鋳造から、モーター筐体や電池ケース鋳造への転換を模索する企業にとって、新規顧客候補との接点は死活問題である。第三に、技能継承戦略の見直しである。熟練工の木型製作技能を3Dモデリング技能に置き換えるのか、両立させるのか。実際の導入企業の人材配置事例を直接聞ける機会は投資判断の精度を高める。名古屋という地の利を活かし、日帰り参加できる中部圏の中小鋳造メーカーこそ、この3日間で今後5年の技術戦略の骨格を固めるべきだ。