ニュースの概要
三菱電機は、ワイヤとレーザーを使って金属を積み上げる方式の3Dプリンター「AZ1200」を、9月25日から販売すると発表しました。最大の特徴は、従来機で最大500kgだった造形対象の重量を、1000kgまで広げたことです。従来は装置の大きさや造形能力が壁となり、分割や別工程が必要だった大型部品にも、形状によっては一体で対応できる可能性があります。鋳造用模型や補助治具、試作品、損傷部品の補修など、使い道は完成品の製造に限りません。価格は1億8500万円と高額であり、導入効果を見極めるには、造形速度だけでなく後加工や検査を含む工程全体での比較が重要です。
引用元: 金属3Dプリンター「AZ1200」を発売へ、大型部品向け造形能力を拡大(khitc)
分析・見解
最大1000kgへの拡大は分割工程を見直す契機になる
従来機の最大500kgから1000kgへ対応重量が広がることで、単に大きな部品を造形できるだけでなく、製造工程の組み方そのものを再検討できます。従来、大型部品を複数の部分に分けて造形し、接合や位置合わせを行っていた場合、一体造形できれば継ぎ目の加工や組立の手間を減らせる可能性があります。分割部品の接合部が強度や寸法精度の弱点になる用途では、部品点数の削減にも意味があります。
ただし、1000kgは造形対象の重量に関する能力であり、あらゆる形状をその重さまで一度に造れるという意味ではありません。造形範囲、材料、形状、設備の稼働条件が実際の上限を左右します。購入検討時には、重量だけでなく対象部品の寸法と形状を使った造形検証が欠かせません。
ワイヤ・レーザー方式は材料の使い方と後加工で評価する
ワイヤ・レーザー方式は、金属の線材を供給しながらレーザーで溶かし、層を重ねて形を作ります。砂や粉末を大量に扱う方式とは異なるため、材料の保管や回収を含む工場の運用に合わせやすい場合があります。一方、積層して作った面をそのまま最終寸法や表面品質にできるとは限りません。切削などの後加工、熱による変形の確認、内部欠陥の検査を含めて、完成までの費用と時間を比べる必要があります。
そのため、評価の単位は造形時間ではなく、材料準備から検査までを含む完成品一個当たりの工数です。造形が速くても、加工や検査に時間がかかれば期待した短縮にはなりません。反対に、切削だけでは材料の無駄や段取りが大きい形状なら、積層造形が有利になる余地があります。
鋳造用模型や治具は高額設備の稼働機会を増やせる
AZ1200の価値は、金属部品を直接作る用途だけにとどまりません。鋳造用の模型や製造時に部品を固定する補助治具を作れれば、木型や従来の金型の製作待ちを短縮し、設計変更にも対応しやすくなります。とくに一品物や少量生産では、専用型に費用をかけるより、必要な形を必要な回数だけ作る方法が有利になる場合があります。
鋳造用模型を3Dプリンターで作る際は、模型の寸法精度や表面の状態が鋳物の品質に影響します。すべての木型や金型を置き換えるのではなく、変更が多い試作、補修部品、特殊な一品物などから適用するのが現実的です。型の製作期間を短くすることと、鋳造後の品質を安定させることをセットで確かめる必要があります。
導入の成否は設備能力より受注と工程の組み合わせで決まる
販売価格は1億8500万円とされ、装置本体以外にも設置、材料、加工設備、検査、保守、人材育成などの費用が伴います。大きな装置を導入しても、対象となる仕事が少なければ稼働率が上がらず、投資回収は難しくなります。反対に、試作、補修、模型、治具など複数の用途をまとめられれば、設備を活用する機会を増やせます。
独自の見方として重要なのは、導入効果を「一つの部品を安く作れるか」だけで測らないことです。型待ちや輸送、設計変更の遅れによって失う時間まで含めて比較すると、造形単価が高くても事業上の価値が見えることがあります。大型化は技術的な選択肢を増やしますが、成果を決めるのは、どの工程の待ち時間や制約を解消するかという使い道の設計です。
ビジネスへの影響
まず既存品を比べ、型待ちと分割組立の負担を洗い出す
導入候補の企業は、いきなり対象部品を広く探すより、過去一年程度の試作、補修、少量生産の記録から、型の製作待ちや分割部品の組立に時間がかかった案件を拾うとよいでしょう。部品ごとに従来工法の材料費、型費、加工時間、外注費、納期を整理し、造形後の加工や検査を加えた場合と比較します。特に、設計変更のたびに型を作り直す部品や、交換部品の供給が途絶えた設備の部品は、候補になりやすい対象です。
比較では、重量だけで造形可否を判断しないことが重要です。実部品の三次元データを用意し、造形寸法、形状、材質、精度、後加工の方法を供給元と確認します。試験片だけでなく、実際に使う部品を少数製作し、寸法、強度、品質のばらつき、完成までの日数を検証します。採用基準を先に決めておけば、試作の成功を量産適用と取り違えるリスクを抑えられます。
1億8500万円の投資は複数用途と稼働率で判断する
価格が1億8500万円の設備では、装置の購入額だけで採算を判断できません。設置場所や安全対策、材料の調達、後加工機、検査、保守、担当者の教育まで含めた総費用を算出します。そのうえで、鋳造用模型、治具、試作品、補修品など、複数の用途を年間何件扱えるかを見積もります。新しい用途が立ち上がるまでの期間も考慮し、楽観的な稼働率だけに依存しない投資計画にすることが大切です。
社内に対象案件が少ない場合は、他部門や取引先との共同利用、造形委託での先行検証も選択肢です。外部委託で造形品質と後工程の負担を確認してから設備導入に進めば、需要の読み違いを小さくできます。導入後は造形時間だけでなく、型の待ち時間、設計変更の回数、完成までの総日数、手直し率を記録してください。これらの指標を従来工程と比べることで、設備が実際に解消した課題と、追加で必要な工程改善を判断できます。