ニュースの概要

精密鋳造を手がけるCASTEMが、10月7日から9日まで大阪で開かれる製造業向け展示会に出展し、鋳造、MIM(金属粉末射出成形)、3Dプリンティングという得意技術を横断的に紹介すると発表した。従来は木型や金属パターンを使ってきた鋳造工程に、3Dプリンターで直接パターンや中子を造形する手法を組み合わせることで、試作にかかる時間を縮め、少量多品種の受注にも対応しやすくする狙いがあるとみられる。鋳造・MIM・積層造形という3つの異なる成形技術を自社内で一体的に見せる展示構成は珍しく、鋳造業界で進むデジタル化の実務的な一歩として注目される。

引用元: CASTEM、鋳造・MIM・3Dプリンタを大阪展示会で訴求(CASTEM)

分析・見解

鋳造・MIM・3Dプリンタを一堂に並べる狙い

CASTEMが今回の展示で鋳造、MIM(=金属粉末射出成形、粉状の金属を型に入れて焼き固める工法)、3Dプリンティングを並べて見せる構成は、単なる技術の陳列にとどまらない。この3つは部品の形状や生産数量によって最適な工法が変わる関係にあり、一社で複数の選択肢を示せることは、発注側にとって「どの工法で作るべきか」を一箇所で相談できる窓口になるという利点につながる。自動車や産業機械の部品では、試作段階でMIMや3Dプリントを使って形状を確認し、量産段階で鋳造に切り替えるといった使い分けが実務でよく起きている。

3Dプリンターが鋳造の「型」を置き換える技術的な意味

鋳造は本来、木型や金属パターンという物理的な型を使って砂型や金型を作る工程を経る。この型の製作には数週間かかることも珍しくなく、鋳造全体の納期を左右する最大のボトルネックになってきた。3Dプリンターで砂型や中子(なかご、=鋳物内部に空洞を作るための砂の部品)を直接造形できれば、型を作る工程そのものを省略できる。試作用の鋳物であれば、従来数週間かかっていた工程が数日に縮む例も報告されており、設計変更のたびに型を作り直す費用と時間を大きく圧縮できる点に最大の価値がある。

MIMと鋳造、使い分けの境界線はどこにあるのか

MIMは小型で複雑な形状の金属部品を大量に作るのに向いた工法で、鋳造が苦手とする微細な形状や薄い肉厚の部品を得意とする。一方で鋳造は、MIMでは作りにくい大型部品や、少量からでも採算が合う点で優位に立つ。両者は競合というより補い合う関係にあり、CASTEMのように両方を自社で持つ企業は、顧客の部品形状や数量に応じて最適な工法を社内で選び分けられる強みを持つ。発注企業からすれば、複数の加工業者に見積もりを依頼する手間を省けることを意味する。

鋳造業界全体に広がるデジタル投資の流れ

今回の展示は一企業の販促活動だが、背景には鋳造業界全体で進む設備投資の転換がある。国内の鋳造業は中小企業が多く、熟練職人による木型製作や砂型造形に頼ってきたが、高齢化による技能の引き継ぎの難しさが長年の課題だった。3Dプリンターによる型製作のデジタル化は、こうした技能依存を和らげる手段としても位置づけられており、今回のような展示会での訴求は、同業他社の設備投資の判断にも影響を与える可能性がある。

ビジネスへの影響

発注先選定は「工法の相談ができるか」で差がつく

部品の発注担当者にとって、鋳造・MIM・3Dプリントを一社で扱える取引先は、形状や数量が固まっていない開発初期の段階から相談できる利点が大きい。従来のように工法ごとに別々の業者へ見積もりを依頼する体制では、試作から量産への切り替え時に仕様のすり合わせが二度手間になりやすい。一貫して相談できる窓口を持つ取引先を軸に、サプライヤーの選定基準を見直す価値がある。特に複数拠点で部品調達を行う企業では、工法を横断して提案できる取引先を数社に絞り込んでおくことで、緊急時の代替生産先としても機能しやすくなる。

試作リードタイム短縮を前提にした開発計画の組み直し

3Dプリントによる型製作で試作期間が数週間から数日に縮むのであれば、製品開発のスケジュール自体を見直す余地が生まれる。これまで型待ちの期間を見込んで設計変更の回数を抑えていた企業は、短縮された試作サイクルを前提に、より多くの検証を開発初期に盛り込む計画へ切り替えることで、量産後の手戻りを減らせる可能性がある。とりわけ複数の設計案を並行して試す「フロントローディング」(=開発初期に検証を前倒しする進め方)がやりやすくなる点は、量産移行後のコスト超過を防ぐ効果も期待できる。

中小製造業にとっての設備投資の優先順位

自社に鋳造設備を持つ中小企業にとって、今回の動きは3Dプリンターを型製作の代替手段として検討する一つの材料になる。高額な造形機をいきなり導入するのではなく、まずは外部の専門業者に試作用パターンの造形だけを委託し、効果を見極めてから自社設備への投資を判断する段階的な進め方が現実的だろう。

関連記事

[PR]