ニュースの概要

米国の精密加工・金属積層造形企業Mears Machineは、Velo3D社の金属3Dプリンター「Sapphire XC」の6号機を導入する。この機械は、これまで鋳造で作ることが当たり前だった銅ニッケル合金の専用機として動かす。設計の相談から造形、機械加工、最終検査までを一つの拠点で行える体制が整う。主な対象は、鋳造用の木型や金型をなくしてしまった部品、少量しか作らない部品、納期が厳しい部品である。型を作り直さずに済む点が、導入の大きな理由と読める。

引用元: Mears、鋳造が主流だった銅ニッケル合金の金属3Dプリンティングを導入(Morningstar / PR Newswire)

分析・見解

型がなくても部品を作れるという、鋳造の前提を崩す動き

銅ニッケル合金は海水に強く、船舶の配管やポンプ、海洋設備の部品に長く使われてきた。形が複雑で数も多くないため、砂型鋳造が定番だった。鋳造では最初に木型を作り、その木型から砂型を取る。つまり部品が1個でも、型の準備に時間と費用がかかる。

金属3Dプリンターは、設計データさえあれば型なしで形を作れる。今回のニュースの核心は、この仕組みが銅ニッケルという「鋳造の領域」に正式に入ってきたことである。アルミやチタンでは積層造形が先に広がった。銅系の合金は熱を逃がしやすく、レーザーが反射しやすいため、造形が難しいとされてきた。専用機を置くという判断は、安定して造形できる見通しが立ったことを示している。

本当に効くのは、古い図面と失われた型の問題

日本の鋳造現場でも事情は同じだ。何十年も前に納めた製品の補修部品を頼まれても、木型が傷んで使えない、あるいは廃棄されていることが珍しくない。木型を一から作り直すと、数十万円から数百万円かかることもある。1個か2個しか要らない部品には割に合わない。

ここで積層造形が効く。現物を測って3Dデータにし、そのまま造形すれば、木型の工程を飛ばせる。Mearsが「木型や金型を失った部品」を最初の対象に挙げたのは、需要が確実にあるところから始める堅実な選び方だと言える。

鋳造の置き換えではなく、役割分担が進む

誤解しやすい点がある。積層造形は、大量生産の鋳造を奪うわけではない。同じ形を数百個、数千個作るなら、型を一度作ったあとの鋳造のほうが1個あたりの単価は大きく下がる。造形速度にも限りがある。

一方で、数個から数十個の範囲では逆転が起きる。型代を割る数が少ないほど、積層造形が有利になる。電気自動車や新しい産業機器のように、試作と改良を何度も繰り返す分野では、この範囲の仕事が増えている。鋳造は量産、積層造形は少量と補修、という線引きが少しずつはっきりしてくるだろう。

一拠点での垂直統合が、小さな会社の武器になる

もう一つ見逃せないのが、設計から検査までを一か所で回す体制である。造形しただけの部品は、表面が荒く、寸法もそのままでは使えない。機械加工で仕上げ、検査で品質を確かめて初めて製品になる。これを複数の会社にまたがって頼むと、受け渡しのたびに日数がかかる。

一拠点で完結すれば、不具合が出たときも原因をすぐに追える。木型づくりから仕上げまでを自社で持つ中小の工場にとっては、同じ発想を取り入れる余地が大きい。

ビジネスへの影響

補修部品と少量品の見積もりを見直す

まず取り組みやすいのは、過去に断ってきた仕事の洗い出しである。型がない、数が少ない、納期が短い、という理由で見送った案件は、積層造形なら受けられる可能性がある。自社で機械を持たなくても、造形を外部に頼み、仕上げと検査だけを自社で担う形から始められる。

コストの目安は、型代を何個で割るかで考えるとよい。たとえば木型に100万円かかるなら、10個作る場合は1個あたり10万円の上乗せになる。造形費がそれを下回るなら、積層造形のほうが安くなる。この計算を案件ごとにしておくと、顧客への提案が速くなる。

3Dデータを持つことが、新しい資産になる

今後は、現物から測ってデータ化する力が価値を持つ。古い木型や実物を3Dスキャンして保管しておけば、将来の補修依頼にすぐ対応できる。木型は劣化するが、データは劣化しない。

同時に、職人の持つ知識を図面や条件として残す作業も進めたい。積層造形を使いこなせるのは、結局は素材と形を理解した人である。

導入前に確認すべき三つの点

一つ目は、使う合金の規格や品質基準を、造形品でも満たせるかという点である。船舶など用途によっては、認証や試験が求められる。二つ目は、造形後の機械加工で削る量を見込んだ設計にすることだ。三つ目は、納期と単価を実際の試作で確かめることである。

小さく試し、数字で判断する。この順序なら、大きな投資をせずに自社の勝ち筋を見つけられる。

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